TITLE

2017年秋の例会報告

2017年、秋の例会は9月24日に国立科学博物館・附属 自然教育園 (2階会議室)で行われた。

会長挨拶では蛾のさまざまな擬態の例が紹介され、とくにツバメエダシャクに似た南米のヤママユガの写真は会場内が驚きに包まれた。
南米にはツバメエダシャクは分布していないのにも関わらず、どこでこのような模様や形を獲得したのか興味深い話題であった。

研究発表会では2017年春に長野県で得られた、日本未記録のトチュウウスクモヨトウの発見から報告に至るまでの経緯が紹介された。
韓国ではトチュウの害虫であることから、今後の推移を注意深く観察したい。

続いて日本産シャチホコガを形態と分子系統解析したまとめが紹介がされた。
成虫、幼虫、分子系統解析を用いて、それらを総合的に加味した研究発表であり、シャチホコガの研究には欠かせない成果である。
また、昨年に出版されたシャチホコガ科の形態、分子系統をまとめた論文「Molecular phylogeny of the Notodontidae」 Tinea Vol.23, Supplement 1も併せて参考にされたい。

アジアと日本のアケビコノハの分布と相違点では、広域分布している本種は交尾器の変異の幅もあり、また区別の付きにくい種もいることから今後も様々な標本を観察する必要があるとの結論であった。

伊豆大島のミノムシ探検記では伊豆大島をさまよいながら、蓑探しを行った結果、実は伊豆大島に上陸した港付近で種数、個体数とも一番多くのミノムシが観察されたとのことであった。
静岡県朝霧高原蛾類調査報告は今年、夏に合計10回行われた環境省からの委託調査の結果で、ライトラップで得た蛾の紹介であった。再発見が期待されたアサギリヨトウ(キシダムラサキヨトウ)は確認されなかった。
悪天候が続き、大変苦労された調査であったそうだ。来年の成果も引き続き期待したい。 本州中部山岳地帯から発見された日本未記録属Narycia(ミノガ科)の1新種は5mmほどの大きさの蓑をもつミノガであった。今後も日本未記録種や未記載種が発見される可能性が大いにある。
近況報告では山荘あらふねで行われたみくに会の報告、蛾類学会公式WEBサイトリニューアルの報告、『世界のカトカラ』未紹介のカトカラの標本紹介などがあった。
今回の例会参加者は34名、終了後の懇親会参加者は27名で東京や関東周辺、愛知県、沖縄県など遠方からの参加者同士、活発な意見交換や議論がなされた。


 
 

カテゴリーの一覧へ戻る

Last update: 3 Oct, 2017