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蛾類学会コラム14 ヤママユ(天蚕)大量飼育での出会い

三田村敏正

私はかつて福島県蚕業試験場というカイコの試験場でヤママユ(天蚕)の大量飼育をしていた。一度に飼育するのは1000~5000頭にもなるので、屋外のパイプハウスでの飼育とはいえやはり大変なのだが、飼育していると面白いことに出会うことがある。ここでは、そのいくつかを紹介したい。

まずは、幼虫体色の変異。中国のサクサンは、幼虫が濃いオレンジやブルーになる系統がいることで有名だが、ヤママユでもサクサンほどではないものの、そのような個体がでることがある。まずは、群青色のような青っぽい色になる個体。これは5齢になるとはっきりと見分けることができるようになる。次は、オレンジ色っぽい黄色系の個体。こちらは、3齢くらいから区別が可能である。通常型の緑色と比べてみるとその差がよくわかる(Fig.1)。

Fig.1 ヤママユ幼虫3色(上:通常型、中:黄色、下:群青色)

次は、成虫斑紋変異。ヤママユは成虫の翅色が様々なことは皆さんもご存じだと思うが、大量に飼育していると、野外では出会わないような色合いのものが羽化することがある。なかでも、の茶褐色の個体で外縁部に黄色の縁取りがあるタイプは私がお気に入りのヤママユ版イエローバンドである(Fig.2)。また、斑紋異常は、単なる奇形なのか、遺伝性のものなのかの判断が難しく、遺伝すると思って交配させ失敗するときれいな標本は得られなくなってしまう。ヤママユではこれまでに2タイプの異常を見つけている。ひとつはの斑紋異常(Fig.3)。これは残念ながら次世代を得ることはできなかった。2つめは、眼状紋消失個体(Fig.4)。こちらは次世代を得ることができ、現在も累代飼育中である。

現在はこれまでのように大量飼育することはできないが、いずれ飼育ハウスを作り、様々なヤママユガ類を大量飼育したいと思っている。

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Last update: 21 Oct, 2018