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蛾類学会コラム16 ミクロレピ界の救世主?目盛り付きグラシン紙爆誕!

中 秀司

展翅の乱れは心の乱れ・・・そんなふうに考えていた時期が俺にもありました((C)板垣恵介/秋田書店)。

ということで今回は、ミクロレピ界に爆誕した「グラシン標本用品 目盛り紙 150mm×150mm」を紹介します。
みなさん、「ハマキガを展翅していて左右が揃わない」「スイコバネガを展翅したいのにちょうど良い展翅テープがない」「パラフィン紙って、どうして目盛りがついていないのだろうか」など考えたことがあるかと思います。私もかつてはそうでした。ネットでいくら検索しても、誰も目盛りがついたパラフィン紙など提供してくれなかったのです。

ミクロレピの左右がmm単位でずれる悶々とした日々を過ごしていたある日、ふと思いついたのです。「なければ作ればいい」と。
パラフィン紙に何かを印刷することは困難だと聞いていたのですが、ひょっとしたら不可能に挑戦する業者がいるのかもしれないと思って探したところ、検索結果のトップに

【2017年10月24日】吉田印刷所は10月20日、自社ブランドサイト「そ・か・な」で、半透明のグラシン紙の封筒にワンポイントプリントできるサービスを開始した。(https://p-prom.com/product/?p=22577)

というニュースが飛び込んできました。「半透明のグラシン紙※に」「50枚から」「プリント」?? これはいけるかもしれないと思った私は、吉田印刷所のメールフォームを使って、希望する仕様を伝えると共に、可能であれば試作品が欲しい旨のメールを入れました。
印刷所の担当の方から電話を頂き、試作品の制作を開始した旨を教えて頂きました。試作品は、目盛りの間隔を0.5mm、1.0mm、2.0mmの3通り用意し、それぞれシアン100%で罫線を引く。そして、5本に1本のみマゼンタ100%で罫線を引く、という仕様でした。

ほどなくして、私のもとへ試作品が届きました。当初私は一般的な展翅テープと同じ長さのものを希望しておりましたが、印刷ロットの都合で試作品は150mm四方となっておりました。初めは「うーん、どうかなあ」と思っていたのですが、いざミクロレピを展翅してみると、この150mm四方というのが非常に使い勝手が良いことに気がつきました。そもそもミクロレピ屋は展翅板を自作することが多く、「展翅板の長さ」という規格自体が存在しません。また、市販の展翅板(長さ約355mm)を使う場合でも、その都度好みの幅に切ったものを使い分けた方が、ミクロレピの展翅には好都合でした。一方で、0.5mmと1.0mmに比べて、2.0mmを使用する機会が少ないことにも気がつきました。2.0mmの目盛りで左右を揃えるような大きさの虫だと、グラシン紙の厚みでは広げた翅を押さえるのには心許ないのです。つまり、2.0mmがちょうど良いような虫は、市販の展翅テープで展翅した方がよい結果が得られるのです。

ひととおり試作品で展翅をして、上記の感想を担当の方に伝えたところ、「もう市販化することが決定しました。詳細が決まり次第連絡致します」と、なんとも気の早い返事が返ってきたのです。もちろん私は「えっ?」と驚きましたが、この製品が市販化してくれれば世のミクロレピ屋は喜ぶに違いないと思い、「是非お願いします!」と答えました。

・・・と、こんなやりとりを経て、「グラシン標本用品 目盛り紙 150mm×150mm」が世に出ることになりました。
価格は50枚入りが750円、100枚入りが1,500円(税別・送料別途200円)とかなりの破格ぶりです。
「ミクロレピを綺麗に展翅してみたい」「ホリイコシジミの左右が揃わない」「チョウバエの展翅が趣味」などのわき上がる闘志が抑えきれない方や、展翅の左右が揃わないと夜も寝られないような方は、是非お試し下さい。商品の詳細は
https://www.ddc.co.jp/…/%E7%9B%AE%E7%9B%9B%E3%82%8A%E7%B4%9…
をご参照下さい。

※ 虫屋がパラフィン紙と呼ぶ半透明の紙は、正確にはグラシン紙と呼びます。パラフィン紙はグラシン紙と若干製法が異なり、より透明度が高い反面、表面への印刷はほぼ不可能です。

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Last update: 16 Dec, 2018